八重子十種
昭和48年9月、初代八重子の舞台生活60年を記念し、本人が選定した10作品を『八重子十種』とし、記念公演を行いました。ここではその10作品についてご紹介いたします。
「大尉の娘」
中内蝶二(1875~1937)作。大正11年6月明治座で井上正夫、花柳章太郎により初演、好評を博した。
「風流深川唄」
川口松太郎作。小説の「風流深川唄」は昭和10年直木賞受賞。
「滝の白糸」
尾崎紅葉門下の泉鏡花(1873~1939)の原作を花房柳外が脚色したもの。
「花の生涯」
船橋聖一(1904~1976)が昭和27年より28年にかけて毎日新聞に連載した名作であり、舞台・テレビ・映画に取り上げられた作品である。
「明日の幸福」
戦禍の様相漸く癒えた昭和29年の新派の舞台にも新しいホームドラマとして登場したのがこの作品である。
「十三夜」
樋口一葉(1872~1869)が明治27年12月「文藝倶楽部」に掲載した小説を久保田万太郎が昭和22年に劇化脚色(昭和4年放送台本に脚色している)同年9月三越劇場にて“新生新派”文芸公演で初演。
「皇女和の宮」
昭和28年朝日新聞に連載された小説を2年後に劇化。明治座にて上演された。演舞場では花柳章太郎全快、水谷八重子芸術院賞受賞記念、新派大合同公演として上演された。
「鹿鳴館」
水谷八重子が半年の静養の後、すばらしい快癒ぶりで勤めた作品である。
「明治の雪」
閨秀作家樋口一葉の生涯のうち、中島歌子の歌塾の生徒時代から明治29年胸を病む迄の4年間を作家北條秀司は克明な作劇法で描き出し、初代水谷八重子の一葉(本名夏子)に合わせて森雅之の半井桃水で好評を博した。
「寺田屋お登勢」
風雲急を告ぐる幕末、坂本龍馬を支えた多くの人々の中に、伏見の船宿の女主人お登勢がいた。俊英劇作家榎本滋民が水谷八重子のために書き下ろした傑作である。