初春新派公演 『日本橋』 名橋「日本橋」架橋100周年記念
日本橋キャンペーン ~記者懇親会篇~
去る11月15日、三越劇場初春新派公演『日本橋』のキャンペーンが行われました。
平成23年は日本橋架橋100周年の記念の年であることもあり、日本橋界隈の方々にご協力いただいて、日本橋西河岸地蔵での成功祈願と、榮太樓での記者懇親会を行いました。
【榮太樓での記者懇親会】
三越劇場から日本橋を渡ってすぐの和菓子の名店・榮太樓の喫茶室をお借りして記者懇親会を行いました。
戌井市郎
日本橋は新派の三大名作と言われております。『滝の白糸』『婦系図』『日本橋』とございますうちでも、『日本橋』は大正4年、日本橋建築が話題になっていた頃に書かれた作品です。翌年の大正5年に生まれたため、残念ながら初演は観ておりません。文学座創設旗揚げ公演の時期、昭和13年ごろに観た『日本橋』が非常に印象に残っております。『滝の白糸』『婦系図』は泉鏡花の原作をもとに、他の方が脚色されたものですが、この『日本橋』は鏡花が書いた台本、鏡花の台詞です。私も何度も演出を手掛けておりますが、今回は日本橋架橋100周年に相応しい芝居にしたいと思っています。
齋藤雅文
最近、三越劇場の新派の作品が評価されているのは、「こういったしっかりした芝居が観たかった」というお客様の支持だと思っております。それに応えられるような、密度の濃い作品にしたいと思っております。『日本橋』は花柳界の話だと思われがちですが、『夜叉ヶ池』『海神別荘』『天守物語』といったものに近いタイプの作品で、若い方が見ても、美しい話だと発見してもらえるものだと思っております。高橋惠子さん、そして市川段治郎さんと新しい生き生きとした作品を作っていきたいと思います。
波乃久里子
西河岸のお地蔵様に行って、雨の中でこんなにもたくさんの方が集まって下さった事、とても嬉しく思っております。本当は晴天の方が良いのでしょうけれども、この『日本橋』という芝居に限っては、台詞にもある「姿は雨に、月の朧に、吾妻下駄がカラコロと…」というお孝の家の側の情景が浮かび上がるようで、とても幸先がいいです。
高橋惠子さんには4年間ラブコールをお送りしておりまして、ようやく叶いました。歌舞伎界からは背が高くて素敵な段治郎さんに来ていただき、一番弟子の鴫原桂がお千世をやらせて頂くことが、お正月早々本当にありがたい事です。
高橋惠子
新派にはかねてより憧れがございまして、いつかはご一緒したいと思っておりました。今回、『日本橋』の清葉というお役を頂いた時、身に余る光栄だと思いました。最初に台本を読ませて頂いた時、日本語の美しさと、一人一人の生きている心が表れていることに本当に感動致しました。自分の中で清葉という役をしっかり作っていきたいと思っていますし、楽しみにしています。
また、戌井先生には初舞台の『近松心中物語』の時、台詞を指導して頂きました。あの時背中を押して「頑張って」と言って下さった先生とまたご一緒できるのが嬉しいです。
市川段治郎
以前『夜叉ヶ池』の萩原をやらせて頂いた時、もう二度と鏡花物はやりたくないと思うくらい台詞の表現に本当に苦心致しました。それから数年たち、再び鏡花作品を読み返しているうちに、その時分からなかったことが少しずつ分かるようになり、同時にその魅力も分かるようになってきました。そんな矢先にこのお話を頂き、新派に初参加させて頂ける事をとても嬉しく、とても光栄に思っております。
新派作品の中でも歌舞伎の諸先輩方が数多くやっていらっしゃる『日本橋』の葛木というお役には憧れがありました。温かく見守って頂けたらと思います。
鴫原桂
お地蔵様にお参りをさせて頂いて、とても興奮しております。以前個人的にお参りをさせて頂いた時は縁のある花柳章太郎先生の絵は窓から覗いただけでしたが、今日は実際に手に取り、触れさせて頂き、脈々と受け継がれている思いを感じて震えがきて涙を流しそうになりました。大切なお役ですので、先輩方が作り上げたものを少しでも引き継げるよう努力したいと思います。
師匠のお孝のもとで、お千世をやらせて頂けることが本当に幸せです。素敵な清葉姉さんと葛木さんが参加して下さり、素敵なお正月が迎えられます。
昭和13年に花柳章太郎が[板絵着色お千世の図額]を西河岸地蔵に奉納した帰りに榮太樓に立ち寄り、女性従業員が大騒ぎになったというエピソードも飛び出しました。榮太樓さんもまた新派と縁があったことがわかり、大変盛り上がりました。