波乃 久里子(なみの くりこ)
平成二十三年春の褒章受章において、紫綬褒章を受章
私は“大好き”というだけで演劇、また新派を続けて参りました。好きなことをやらせていただけるだけでも幸せですのに、このような素晴らしい褒章をいただく事ができて、本当に嬉しく思っています。4歳から舞台にあがり60年、これまで1000以上のお役を演じてきました。今ではお芝居がなくては人として生きていけないかもしれません(笑)。こうして演じ続ける機会を与えていただいていることに感謝し、これからもずっとチャレンジしていきたいと思っています。
秋に再演させて頂く『女の一生』の台詞ではありませんが、「私の一生はこれからのような気がしてならない」と思っています。来年お正月の『東京物語』でも再び山田洋次監督に演出していただきますが、この歳になって尊敬できる方に巡り合えたことはとても幸福な事でございます。一挙手一投足全てが魅力的で、毎日お稽古に行くのが楽しみなんです。
お芝居を観て下さったお客様が元気になって、明日、明後日、生きる希望を持って下さったらこんなに嬉しいことはございません。ことに今の日本は大変な時期ですから、希望のある日本、希望のある女優でいたいですね。親にもらった顔、師匠の初代水谷八重子に創ってもらった顔、そして、これからは自分で創らなくてはいけない、これからが私の人生、今はそんな気持ちでいます。