新派公演『女の一生』
記者懇親会の模様
出演者が一堂に会し初日を前に意気込みを語りました。
大場正昭(演出)
お陰様で2年前の舞台は"新しい『女の一生』ができた"と大変ご好評いただきました。それは、久里子さん演じる布引けいの「女の一生」だけではなく、司さんの堤しず、新派の若手女優による娘たちの「女の一生」、さらには風間さん、中山さん、安井さんのお力で「男の一生」も生き生きと描かれ、それらが上手く絡み合い、さらに良い芝居になったからではないでしょうか。
「布引けいは久里子にずっとやって欲しいんだ」と昨年亡くなられた戌井市郎先生が、よく仰っていました。ですから今回の再演で、波乃久里子さんがどのような芝居をされるのか私も凄く楽しみですし、さらに芯の太い雰囲気を持った布引けいを一緒に創れたらいいなと思っております。
波乃久里子
『女の一生』を再演出来ることに感謝の気持ちで一杯です。布引けいの台詞に「私の一生はこれからのような気がする」という言葉がありますが、私の人生、役者としての生命もこれからのような気がします。奢った気持ちではありませんが、杉村春子先生の面影を全て消してしまうような「私の一生」を舞台に出してみたいと思っています。
前回の巡業の途中で、風間さんが「布引けいを一生やってください。そして、栄二は僕以外にはやらせないでくださいね」と仰ってくださいました。その時に「ああこんな凄い方に認められたんだ」ってちょっとだけ自信がつきました。司さんも、安井さん、中山さんも私に励ましの言葉をかけて下さいます。こんなに素晴らしい方々に出演していただけること、それは本当に幸せな事です。
杉村先生には、「あなたなら布引けいを立派にできるでしょう。でも、やるなら90(歳)までやりなさいよ、90でやっとわかることがあるのよ」と仰っていただいた事があります。今回は、きっとさらに深く布引けいという人がわかってくるような気がします。戌井先生には「嘘を言うな、上手い芝居はするな、上手いと思った瞬間に上手くないんだよ」とよく言われました。それを守り、今でもどこかで舞台を観て下さっていると思いながら勤めたいと思っています。
風間杜夫
森本薫さんという素晴らしい作家が若くしてお書きになった『女の一生』。前回の公演で、改めて作品のクオリティーの高さに感心した事を良く覚えています。また、台本を2冊もくしゃくしゃになるまで読み込んで、布引けいを自分のものにするために格闘をし、それを見事に舞台で表現した、波乃久里子さんの姿にも感銘を受けました。そして、安井先輩、司葉子先輩、中山仁お兄ちゃん(笑)このメンバーでまた出来ることを心待ちにしていました。最後の焼け野原での場面で「これからの新しい日本に何か期待をかける」というような台詞があるのですが、戦争と天災という違いはありますが、明日への希望、新しい日本の形というものを、まさに今、この芝居が、そのような形でお客さんに届けば良いなと思います。是非、たくさんのお客さんに観ていただきたいと思っています。
司葉子
波乃さんから是非このしずの役を私にとご指名いただき、前回初めて新派のお芝居に出演させていただきました。私にとって新派はお芝居のメッカ、何から何まで新鮮でした。しずは私の年齢とほぼ同じで、人生にとても共感を持っているので、またしずができることをとても楽しみにしています。
安井昌二
天邪鬼的なおじの役を勤めております。戌井先生が亡くなられて大変残念ですが、今回は大場さんの演出です。いろいろと煩い注文が出ると思いますが、それに負けずに頑張ってやっていきたいと思います。
中山仁
舞台を再演することは、とても大変な事です。再演をするという意味をしみじみと考え、きちんと本を読み直して、どっこいしょと台詞を覚えて(笑)頑張りたいと思っております。