初春新派新人公演 『日本橋絵巻』
新人公演への意気込み
初春新派公演『日本橋』上演期間中の1月21日(金)、初春新派新人公演『日本橋絵巻』を上演致します。『日本橋絵巻』とは、『日本橋』の中の「一石橋の朧月」、「稲葉家の二階」、「一石橋の雪」という主要三場面を上演する、通称「雪月花」と呼ばれるハイライト版です。
『日本橋』に出演しながら寸暇を惜しんで稽古に励んでいる出演者たちに、新人公演への意気込みを聞きました。
【質問1】 今回のお役についてお聞かせ下さい
【質問2】 『日本橋』という作品にはどういう印象をお持ちですか
【質問3】 お客様へのメッセージをお願いします
※この公演は、一部の役に関して、二人の俳優が場面を分けて演じます。
役名の後の<>は、出演する場面です。
一石橋の朧月…<月>、稲葉家の二階…<花>、一石橋の雪…<雪>
瀬戸 摩純 (お孝<月><花>)
【1】 お孝は、気風が良く、頭が良く、激情型で、自分勝手で奔放に見えますが、本当は純粋で不器用で弱い女性なのかもしれない。そして妖艶で美しくなければいけない。一石橋の朧月ではお白酒も手伝って滑らかなトークと洒落、色気で葛木を惹き付け、稲葉屋の二階では前の男と命がけの修羅場になる。幕切れにはお孝、清葉、葛木、お千世が入り混じっての思いが表現できたらと思います。
【2】 鏡花作品の古典と聞いただけでも震えます。台本を読んだ日から怖い夢を見ては眼が覚める日々が続いています。「油虫でも毛虫でも」だの、「肉から骨へ切り刻め」だの、普通は言えませんよね。しかし小気味のいい、美しい詩のような台詞も沢山散りばめられていて心地がいい。これが鏡花の世界なのでしょう。
【3】 日本橋ファンは大勢いらっしゃると思います。私は知らない世代でしたが、同じ世代や若い方々、初めて観る方にも、こんな世界があるんだ!、いいフレーズだから真似してみたいなど、新しい音楽や芝居を観る感覚で足を運んで頂きたいです。日本橋架橋100周年に日本橋で『日本橋絵巻』を是非ご覧下さいませ。
山吹 恭子 (お孝<雪>)
【1】 第三幕の一石橋の雪のお孝を演じます。葛木さんとすっかりいい仲になり、雪の中をちょっとした道行気分のいいムード。お孝の持つ明るさ、可愛らしさ、あどけなさを古典『日本橋絵巻』の中で美しく演じられればと思っております。
【2】 『日本橋』は以前幹部披露公演で清葉を演じさせて頂いた、思い出の沢山詰まった作品です。お孝と清葉という性格の全く違う女性、今でこそ芸者さんが少なくなっていますが、ドラマの内容は今まで世の中で起きている人間関係の葛藤だと思います。泉鏡花の名作を、今の時代、邦楽の下座に合わせ、役者スタッフの共同作業で創り上げられる総合芸術作品は、新派でしかできない芝居、新派俳優がいないとできない芝居、新派の宝物だと思います。
【3】 新派の宝物の作品で若手が一丸となり、今まで積み重ねたパワーを爆発させたいと思います!是非新人公演『日本橋絵巻』においで下さいませ。
石原 舞子 (清葉<月>)
【1】 清葉という女性は、優しくて芯が強くて母性もある、男性も女性も理想とする役だと思います。清葉は自分の為ではなく、常に人の幸せの為に生きてきたのでしょうね。そんな我慢をしている女性が、葛木と別れた後、一石橋まで葛木を追いかけて来て、昔少し会ったことのあるおじいさんに本音を語る。もう一生語らないのではないかという思いを伝えることが出来たら幸せです。
【2】 12年前、幹部昇進の時に『日本橋絵巻』のお孝を新橋演舞場で勉強会としてやらせて頂き、一番印象深い作品です。今考えればそれまで娘役しか演じていなかった私にとって初めての大人の役でした。幸せな事です。この『日本橋』は泉鏡花先生が直々に脚色なさっていて、感情が急にMAXに達する、いわゆる狂気が随所にあるのですが、実はそこが一番好きな作品だと思う理由です。また、演出、邦楽、衣裳、かつら、装置、小道具すべてが最高の総合芸術だと思っております。
【3】 今回、新人公演をやらせて頂ける事を大変幸せと思っております。協力してくださる諸先輩方、スタッフの皆様、本当に有難うございます。そして本公演共々一人でも多くのお客様に観て頂けたら嬉しいです。力はまだまだ及びませんが情熱とチームワークで素敵な舞台にしたいと思っております。戌井先生、きっと見ていて下さいね。
鴫原 桂 (清葉<雪>)
【1】 「雪月花」の<雪>、一石橋の雪の清葉を勉強させて頂きます。
【2】 「春で朧で…」花のように、雪のように鏡花の台詞が舞い散る美しい作品だと思います。又、『日本橋絵巻』は幹部披露の勉強会で同期の仲間と初めて取り組んだ思い出深い作品です。
【3】 『日本橋』ではお千世を勤めさせていただいておりますが、新人公演は優しい美しい清葉姐さん、大人の女性です。精一杯勤めたいと思います。皆様、是非お運び下さいませ。
中村 繭古 (お千世<月>)
【1】 まだ右も左も分からない頃の12年前、『日本橋』が上演された時にいつかやってみたいと心に思ったお千世を勉強会でできるチャンスを頂き、素直に嬉しい気持ちです。この気持ちをお千世役に投影できればと思います。
【2】 妖艶な夢の世界。これぞ新派と思う作品です。
【3】 とにかく全身全霊、頑張ります!
松村 沙瑛子 (お千世<花>)
【1】 お千世は、素直、純粋、一生懸命という言葉がとても似合う女の子なのではないかと思っています。純粋にお姐さんを慕い、一生懸命ついていく姿に本当に心を打たれます。役だけでなく普段からこうありたいと思うくらい…すこしでもお千世に近づけるよう精一杯勤めたいです。
【2】 思わず声に出して読みたくなるような心地のいい台詞ばかりで、心に残る綺麗な言葉が沢山詰まった作品だと感じました。
【3】 泉鏡花が描く風情ある美しい世界で、若い方々にも観に来ていただきたい素敵な作品です。少しでもその世界に近づけるよう精一杯勤めたいと思っておりますので、是非ご覧ください。
鈴木 章生 (五十嵐伝吾)
【1】 五十嵐伝吾というお役は、大矢市次郎先生、菅原謙次先生、師匠である安井昌二も演じた大変なお役です。身が引き締まる思いです。
【2】 言葉の錬金術師である泉鏡花の台詞の素晴らしさ…逆にそれを表現する難しさ…。とても耽美的な戯曲。
【3】 諸先輩方が残された財産を継承する覚悟で挑みます。
児玉 真二 (笠原信八郎)
【1】 笠原信八郎というお役は、12年前に一度勉強でやらせて頂いたお役で、今回で2度目になります。同じ役なのでリラックスというよりも逆にプレッシャーを感じています。
【2】 新派の古典と言われる作品なので、新派の一員としてとても大切に思っています。
【3】 古典を伝承しつつも、新しい息吹を感じて頂けたらと思っています。
井上 恭太 (葛木晋三)
【1】 葛木は姉への思いを貫くロマンチスト。今回は抜粋での上演ですが、ロマンチストの部分を秘めながら、大正時代のダンディズムを前面に押し出したいです。
【2】 現実離れしていて空想的で甘美。日本語の美が散りばめられた詩的世界。
【3】 歴代の名優が演じてきた葛木晋三役をやらせて頂ける事に感謝致しております。稽古の時から素敵な葛木を演じておられる市川段治郎さんに刺激を受け、この刺激をエネルギーに変えて、自分らしい葛木晋三を作り上げる思いでおります。お時間がございますれば是非とも劇場までお越し下さいませ。宜しくお願い申し上げます。