初春新派公演『太夫(こったい)さん』
水谷八重子、波乃久里子 きものトークショー
三越劇場で上演中の初春新派公演『太夫さん』に出演している水谷八重子と波乃久里子が、1月12日(月)日本橋三越本館4階呉服特選サロンで「きものトークショー」を行ない、着物や舞台『太夫さん』について語りました。
終演後、美しい舞台衣裳姿で2人が会場に登場すると、お待ちかねのお客様から大きな拍手がおこり、楽しいトークショーがスタート。
水谷 八重子
三越劇場で上演いたしております『太夫さん』で女将のおえいを勤めています。花柳章太郎先生のおえいを拝見していますが、小刻みに首を横に振るような、少し老けた役作りをされていたので、80歳位かと思っておりましたら、実は私の実年齢よりも若い役柄ということでびっくりいたしております(笑)。
初演の時、私は出演しておりませんでしたが、ご一緒してモデルになった島原の青木楼に泊まりに行きました。当時まだ、本物の“太夫さん”がいらして、お会いできたことを良く覚えています。北條先生は暫くそちらにお泊まりになって、本当に目にして耳にしたもの、汽笛の音や床がミシミシと鳴る音を作品に入れられています。そうして、この作品ができるまでに3年もの月日がかかったそうです。
波乃 久里子
『太夫さん』で、深雪太夫を勤めております。この作品とは大変縁が深く、私が新派に入りましたのが昭和36年、その翌年に『太夫さん』の小車太夫というはつらつとしたお役をさせていただいた事をよく覚えています。当時は16歳で大人しかったものですから、劇中で“東京ブギウギ”が上手く踊れなくて、先輩に随分教わりました。
いま着ているお衣裳は、馴染みのお客様と接するときの着物ですが、これは花柳先生が考えられた物で、新派に代々受け継がれている古い物です。今ではこんな織り方はできないかもしれませんね。
───このお芝居の見どころについて
- 水谷八重子:
- 絆、ふれあい、縁、そういった人と人との肌触りというものを、観て感じていただければなと思っています。あらゆる人と人との縁というものを、北條先生は島原という場所を借りて、そこに凝縮してお書きになったんだとおもいます。そういった縁を大切にしていらっしゃったんだと、今回改めて思いました。
- 波乃久里子:
- 今回『太夫さん』を三越劇場で上演すると伺ったとき、宝永楼の舞台セットは、とても無理ではないかと思っていました。でもスタッフの方が、見事に素晴らしく飾って下さって、本当に驚き感激しています。そして、最後の道中に代表される衣裳の数々もとても素晴らしいので、そういった所も楽しんでいただければと思っています。八重子おねえさんと安井昌二さんのコンビは本当に素敵ですし、実は、劇中で三度食事をとる場面があるんですが、スタッフの方が料理上手でとても美味しんですよ(笑)。
───今年のご予定
- 波乃久里子:
- 6月には三越劇場で『女の一生』を勤めさせていただきます。ご存じの通り杉村春子先生の最高傑作の一つです。実は、まだ踏ん切りがついていなくて、“女”という字を見るだけで怖くなってしまいます…でも心を鬼にして、頑張って勤めたいと思っています。
- 水谷八重子:
- 9月には新橋演舞場で、私たちと、沢田雅美さん、村松雄基さん、井上順さん、そして石井ふく子先生の演出、橋田壽賀子先生の作で『おんなの家』を上演いたします。炉端焼き屋の三姉妹のお話ですが、おおきなしゃもじみたいな炉端焼きを扱いながら「あいよっ!」って上手く言えるか…ぜひ楽しみにしていてくださいね。
三越劇場初春新派公演『太夫さん』は、現在大好評上演中。
ぜひご観劇下さい。(1月25日まで)