Prince Letter(s)! フロムアイドル

夢は叶うから!
諦めなければ絶対に!

そうやってふたりで頑張ってきたんだよね。
オレとお前の。最高のふたりで!

宇宙一のアイドルを目指すっていう夢を。

かっけー仲間たちと一緒に。
満天の星空みたいに輝く人で、ドームを溢れさせるっていう夢を。

それでみんなが浮かび上がっちゃうくらいに。

――最高の幸せを届けるっていう夢を。

叶えるために、ふたりで頑張ってきたんだけど。

あれ、なんで?
なんで突然、いなくなっちゃったんだよ。

報告を聞いて。
頭ぐしゃぐしゃになって。まとまらなくて。

事故。

とか。なんとか。
聞いてもやっぱり信じられなくて。

小さい頃からずっと一緒だったじゃんか。

一緒に夢を見て。
一緒に頑張って。
一緒に怒られて。失敗して。めげなくて。追いかけて。

いつか一緒に星空(あそこ)に立って。
重力無視の最高の幸せをみんなに届けようって。

約束したじゃんか。

なのに、なんで。
なんで突然――いなくなっちゃったんだよ。

ふたりで叶える夢なのに。
オレひとりになったら、どうすればいいんだよ。

夢は叶うって。諦めなければ絶対にって。
どこまでも信じてたけど――

その言葉は、間違いじゃなかった。

だって諦めた瞬間に。
それはもう〝夢〟じゃなくなっちゃうんだから。

だとしたら叶わない夢なんて。

どこにもない。

* * *

それからの間、どうやって過ごしてたっけ。
分かんないや。

変わらずぐしゃぐしゃになってたオレに。
相方の親御さんから。

『これ、アキト君に』って。

懐かしいキャラクターが描かれたクリアファイルをもらって。
中には書きかけの便せん? が入ってて。

書きかけって言ってもさ。そこには。

最高の相棒へって。一行目。
直接伝えれば早いのかもしれないけどって。二行目。
空白。三。四。五行目。
そのあと、最後まで。

つまりはたった二行しかない書きかけの手紙。
それでもオレに宛てられた、最後の手紙。

あーもう。
頭ぐしゃぐしゃになって。まとまらなくて。

どうしようもないまま、オレはそのぐしゃぐしゃを。

便せんの余白に書きつけることにした。

最高の相棒へって。一行目。
直接伝えることができたらどれだけ良いかって。二行目。
そこから、つらつらと。言の葉を。
三。四。五行目。
そのあと、最後まで。

オレの気持ちを。ぐしゃぐしゃでまとまらない頭の中をしたためて。
住所も書かずに投函してやった。

この先オレは、どこに向かえばいいんだろ。
分からないけれど。

お前を失って。
宙ぶらりんになった夢を抱えて歩くには。

宇宙の果ては――遠すぎた。

* * *

がたん。
ある日。ポストが震えて。

そこにはいつか、ぐしゃぐしゃの頭で出した手紙が。
最高の相棒に宛てた手紙が、戻ってきてて。

表書きには『あて所に尋ねあたりません』ってむつかしー日本語のスタンプが押されてて。

あーもうそんなの。あいつに届けるために。
どこに宛てたらいいかなんて。
オレに分かるはずがないから。

思わず手に取って。
破り捨ててしまおうとも思ったけれど。

宛先の無い手紙なんて。行き場のない気持ちなんて。
どこかに放り投げてしまいたかったけれど。

あれ? なんだか――違和感があって。

封筒を開けてみたら。
オレが書いた手紙の下には。
余分に剥がしちゃった真っ白い便せん。
何にも書かれていない罫線だけの紙。

が、あるだけのハズなのに。
そんなことあるワケないから。

真っ白な手紙に決まってるんだけど。

あれ? なんだか。違和感があって。

便せんをめくったそこには。

最高の相棒の――愛嬌のある字が。

言葉が。

確かに、あって。

そんなことあるハズないから。あるワケないから。
真っ白な手紙に決まってるんだけど。

あれ? おかしいな。
オレの目には、確かに――。

視界が滲んで。
ぼやけた中でそのひと文字ひと文字を。言葉を。
噛み締めるようにぐしゃぐしゃの頭の中に押し込めた。

夢は叶うって。諦めなければ絶対にって。
どこまでも信じてたけど。
その言葉は間違いなんかじゃない。

最高の相方が〝未だ諦めていないのに〟――

オレが先に諦めてどうするんだよ?

夢を見て。頑張って。怒られて。失敗して。
めげずに。追いかけて。そうしたら絶対に。

ふたりの夢は、いつか――。

* * *

がたん。
ポストが震えて。

宇宙一のアイドルを目指すっていう夢。
かっけー仲間たちと一緒に。
満天の星空みたいに輝く人で――
ドームを溢れさせるっていう夢。

それでみんなが浮かび上がっちゃうくらいに。

――最高の幸せを届けるっていう夢。

叶えるためにふたりで頑張ってきたから。
オレとお前の。最高のふたりで!

これまでも。これからも。
夢を叶えるその日まで。その日から。きっと。

ふたりで一緒に、星空(あそこ)まで――。

亜月アキト ポエトリーノベル#0
『ふたりの星空』
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