みどころ
稀代の名優・花柳章太郎を偲ぶ名舞台!
花柳章太郎(明治27年―昭和40年)は、稀代の名優、不世出の女方と称される新派俳優。
女方としての芸を追及し、数々の代表作を残す。幅広い芸域で長らく観客を魅了し続けた。
『鶴八鶴次郎』『京舞』『佃の渡し』『遊女夕霧』『螢』などの代表作で「花柳十種」が選定されるなど、
日本演劇界に残した足跡は計り知れない。
重要無形文化財保持者(人間国宝)、文化功労者。
昭和40年1月新橋演舞場、昼の部に『大つごもり』、夜の部に『寒菊寒牡丹』へ出演したのが、
最後の舞台となる。没後50年を数える。
一、大つごもり
樋口一葉の短編小説をもとに描かれた新派屈指の名作であり、「花柳十種」のひとつ。
波乃久里子が一世一代で、定評のあるみねを勤めます。
◆あらすじ◆
明治も中頃、東京の白金台町。
資産家山村家の女中みねは、健気な働き者の奉公人である。
幼い頃、両親に死別し伯父夫婦に育てられたみねは、病を患っている伯父の借金返済の為、
金の工面を請け負っていた。そして約束の大晦日、大つごもりの午後。
奉公先の奥様あやに前借りを願い出てはいるものの、まだ金の工面ができずにいるところへ、
道楽息子の石之助が久しぶりに姿を現す。
先妻の息子石之助とは折り合いが悪いあやは機嫌を損ね、みねの話を立て切ってしまう。
部屋には失意のどん底に落とされたみねと酔いつぶれた石之助。
目の前には金の入った懸け硯。万事窮したみねは夢とも現とも知らず、懸け硯に手をかけ……。
二、寒菊寒牡丹
昭和初期、新橋花柳界に生きる人間模様──
花柳章太郎に書き下ろされた妻吉を現代に受け継ぐ水谷八重子はじめ、
新派一丸となってお届けします。
◆あらすじ◆
売れっ子芸者の菊葉が、若き実業家の浅野に正妻として迎えられることになり、
築地の香楽亭では集まった芸者たちが騒いでいる。
しかし、当の菊葉はというと浅野がやって来ても変わらぬ態度。
そんな菊葉のことを陰から心配そうに見守る姉さん芸者の妻吉は、
浅野の妻になることを気楽に考えている菊葉に、死ぬ気になって辛抱するよう強く諭すのだった。
その夜遅く、菊葉と妻吉は二人きりで別れの盃を交わす。
堅気になる前の最後の夜に、菊葉は妻吉の口からどうしても聞いておきたいことがあった……
妻吉こそ、自分の本当の母親であるという真実を……。
しかし、妻吉にはそのことを告げられない理由があった。妻吉には木彫師の磯吉という弟がいて……。
出演
一、大つごもり
原作:樋 口 一 葉
脚色:久保田 万太郎
演出:齋 藤 雅 文
み ね:波 乃 久里子
山村 あや:水 谷 八重子
山村嘉兵衛:立 松 昭 二
宇 太 郎:田 口 守
し ん:青 柳 喜伊子
山村石之助 :市 川 月乃助
二、寒菊寒牡丹
作:川 口 松太郎
演出:成 瀬 芳 一
若葉屋の妻吉:水 谷 八重子
菊松葉の菊葉(トリプルキャスト):瀬 戸 摩 純
:石 原 舞 子
:鴫 原 桂
浅 野:鈴 木 章 生
ラシャメン お 新:山 吹 恭 子
お 栄:波 乃 久里子
木彫師太田磯吉:勝 野 洋