みどころ
「金色夜叉」は尾崎紅葉が明治30年から読売新聞に連載し、空前のベストセラーとなりましたが、途中で紅葉の死により未完となったため、その後様々な解釈で映画や舞台に数多く取り上げられました。
今回の上演は、宮本研が昭和56年に文学座に『新釈 金色夜叉』として書き下ろし、新派では昭和58年に国立劇場で上演された作品です。原作の貫一と宮の悲恋物語を、文明開化の風潮の中で、西欧文明に憧れを持つ鴫沢宮、士族の娘に生まれたが没落して高利貸の妻として社会の裏を見てきた赤樫満枝、そして、金によって人生を狂わせながらも新時代を見通す間貫一という登場人物を中心に描くことにより明治という時代を描き直しました。金銭がきっかけで人間の価値観が狂っていく現代にも通じる社会劇でもあります。紅葉の描いた世界をあらたな「金色夜叉」としてこの機会にぜひお楽しみ下さい。
あらすじ
両親に早く死に別れた一高生の間貫一は、小さい頃から親戚の鴫沢家に引き取られ、一人娘の鴫沢宮とは兄妹のように育てられた。そして、将来二人は結婚する約束をしていた。ところが、下谷に本店のある富山銀行の息子富山唯継が、カルタ会の席で宮を見初め、嫁に欲しいと申し込んできた。「結婚は愛です、愛情だけが二人を結びつけるのです」という富山の甘い言葉に、宮は思わず結婚を承諾するのであった。宮に裏切られた貫一は、熱海の海岸で「宮さん、僕は今宵限り、非人間になるよ」という言葉を残し、宮の前から姿を消すのであった。
それから四年、貫一は高利貸し鰐淵の手代になっていた。同業の高利貸し赤樫満枝は、貧しさのあまり親子程も年の違う老金貸しの妻になった女だが、金の為になくしてしまった青春時代を取り戻すかのように、貫一に言い寄ってくる。一方、宮は富山と結婚はしたものの、夢見ていた結婚生活とは全くかけ離れた現実に、悲嘆のうち、気が狂ってしまう…。
出演
水谷八重子
波乃久里子
英太郎
風間杜夫
瀬戸摩純、鈴木章生、高橋よしこ、田口守、柳田豊
矢野淳子、児玉真二、木内宣輝、松村沙瑛子、中嶋ゆか里、久藤和子