みどころ
銀座復興
原作=水上瀧太郎、脚色=久保田万太郎、六代目尾上菊五郎により昭和二十年十月戦災の傷跡の残る東京は帝国劇場で初演された作品です。関東大震災直後の銀座を舞台に、震災で絶望した人、愛すべき街の復興に励んだ人々の物語です。当時の人々の気概は、混迷の現代に生きる私たちを必ずや勇気づけてくれることでしょう。
【あらすじ】
大正十二年九月一日。関東一円に未曾有の大地震が起きた。
地震と火事で焼野原となった東京の姿は、この大都に愛着を持つ人々にとって無量の感慨を催す風景であった。そんな中に立ち尽くしていた牟田に声を掛けた男がいた。銀座で贅沢な装身具を扱う店の山岸であった。山岸はもう東京は駄目だ、二度と銀座は復興しないと言い、牟田は、社会は一度進んで来た道を決して後戻りしない、東京は前よりも立派なものになる、その中心は銀座だと、二人は悉く反対の事ばかりを言い張った。山岸と別れた牟田は水を求めて歩き出したが、一軒のトタン小屋を見つけた。それは震災後第一番に発見した銀座の住人だった。洗濯をする女と褌ひとつにはち巻をした男である。
『復興の魁は料理にあり 滋養第一の料理ははち巻にある』。髯題目のような貼り紙を見つけた時、たくまないおかしさが、震災後の不景気な牟田の心に蘇って来た。そして…。
振袖紅梅
作=川口松太郎、昭和三十八年九月新橋演舞場で花柳章太郎により初演された縫箔職人の友次郎と資産家の娘・君子の悲恋です。今回は昭和二十九年に発表された小説・人情馬鹿物語の第一篇「紅梅振袖」と融合させて朗読劇に仕立てました。平成二十三年一月『日本橋』で新派公演に華を添えた市川月乃助を特別ゲストに迎え、新派の花形俳優が奮闘いたします。
【あらすじ】
職人佐藤友次郎は、深川万年町のお芳の家に住んでいる。お芳は伯父の後家で、元吉原の女郎だった。
友次郎は名人気質の職人で、縫友と言えばこの道でも有名だったが、気が向かなければ仕事をせず、そのくせ自分の芸術的良心を満足させる為に、売り物にしない仕事をする。
それは光琳の紅梅の振袖で、実は彼が密かに思いを寄せている人に着せるのが夢だった。その人というのは冬木の大尽大隅家のお嬢さん、君子である。
彼女は趣味として友次郎に縫箔を教わっていたが、父の事業の失敗で大隅家の没落を救う為に園田伯爵家に妾奉公に上がることになった。友次郎の家に別れを告げに来た君子は、思いあまって友次郎に愛の告白をする。園田家への奉公は二年の期限、それが済んだら、一緒になってくれるか、それまで待っていてくれるかと必死で思いを告げる。待ちますと友次郎は答え、二人はヒシと抱き合うのだった。
それから二年の月日が流れたのだが…。