前篇『男はつらいよ』とは
前篇『男はつらいよ』とは
「私、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。」
『男はつらいよ』は、ご存じの通りフジテレビで26話が放送されたあと、結末に抗議が殺到するなど、多くの視聴者の熱い想いに応えて、映画化されました。ちなみにテレビ(フジテレビ)の1回目の放送は、1968(昭和43)年10月3日。そして映画の公開は、1969(昭和44)年8月27日。
1960年代から1970年代にかけて、日本は経済的に急成長を遂げます。1964(昭和39)年に第18回東京オリンピック、1970(昭和45)年には大阪万国博覧会が開催されました。この2つの国際的なイベントで日本中が沸くさなか、東京の東のはずれの昔ながらの瓦屋根が並ぶ町・葛飾柴又を故郷にした「下町の不良少年のなれの果て」の物語が生まれたのです。
「桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております…。思い起こせば二十年前、つまらねぇことで親父と大喧嘩。頭を血の出るほどブン殴られて、そのままプイッと家をおん出て、もう一生帰らねぇ覚悟でおりましたものの、花の咲く頃になると、決まって思い出すのは故郷のこと…」
冬は暖かい南の海岸近く、夏は涼しい北の草原など、全国至るところを旅しながら、テキヤ稼業で身を立てるフーテンの寅さん。酸素がないと生きていけないように自然に、旅先で出会った女性に惚れる寅さん。そして失恋するか身を引くか成就しない恋愛模様が、故郷の柴又はもちろん、日本の各地の美しい風景とともに描かれます。寅さんの温かい心は、各作品に登場するマドンナとともに、観客の心を引き付けてやみません。
寅さん記念館
寅さん記念館
今まで、道を挟んだ別棟の2階にあった山田洋次ミュージアムですが、今回、同じ棟、同じ階にある寅さん記念館の横に移設、面積を1.8倍に拡張しました。
監督のこだわりであるフィルム撮影の紹介においては、撮影現場で使用されていた機材を中央に配置。キャメラから映写機まで、作品の行程で使用された機材の実物を展示しています。また、山田監督の映画作品の全予告篇視聴コーナーを柴又キネマと名づけ、昔の映画館気分で味わっていただくことができます。更に、山田監督の多岐に渡る映画以外の創作活動を紹介する「監督の部屋」も新設されました。
映画『男はつらいよ 心の旅路』は、シリーズで唯一、本格的な海外ロケが行われた作品です。一見、結びつかない様に思われる寅さんとロケ地であるウィーンの街並みが不思議な調和を見せ話題になりました。そのウィーンに沢山あるカフェは、それぞれの店舗が観光客、地元の方々が自由に集う場所として愛されています。
今回のTORAsan cafeは、そんなウィーンのカフェの様に、寅さんを愛して下さっている方も地域の方も江戸川沿いのサイクリングの途中で休憩をする方にも、愛される場となることを目指して開店致しました。店内には寅さんのいろいろな表情を写した写真が飾られ、のんびりとしたひと時を過ごしていただけます。また、ここでしかお目にかかれない特製TORAチーノ(カプチーノ)やサイフォンコーヒー、メロンクリームソーダなどのお飲物とおいしいケーキ、ソフトクリームをお楽しみいただけます。
入口付近には、どなたでもお入りになれるお土産コーナーを設置し寅さんグッズやDVD、関連本を取り揃えています。記念館来館の思い出を更にたくさん作っていただこうと考えています。
『男はつらいよ お帰り 寅さん』特報映像
『男はつらいよ お帰り 寅さん』特報映像
後篇寅さんに会いたくなったら・・・
タイムトリップしたような風情がただようこの町で―――。
今にも寅さんがふらりと通り過ぎていきそうな、「葛飾柴又」の商店街。たまには、昭和のおもかげが色濃く残る、都内の下町をぶらり散策はいかがでしょうか?人情ときっと触れ合えるはず。
それでは、映画の中のくるまやの店員・三平ちゃんでお馴染みの北山雅康さん、松竹芸能所属・倉沢しえりさんに体験していただきましょう!
京成金町線柴又駅
京成金町線は、高砂駅、金町駅と中間にある柴又駅を結んでいて、1990年代当時から単線で、20~30分おきくらいで電車が走っていました。
寅さんと妹さくらとの印象に残るシーンが幾つも生まれた駅ですが、三平ちゃん役の北山さんが満男役の吉岡秀隆さんと線路を挟んで会話するシーンのとき(『寅次郎の縁談』)など、北山さんが関西弁のセリフなどでNGを出すと、「つぎの電車が来るまで30分待ちだぞ」と製作の方から怒られたそうです。
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1990年に建てられた寅さん像の前で。
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「柴又にいらっしゃい!」
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寅さんの笑顔が迎えてくれます!
帝釈天参道
映画化を前にして、原案・脚本の山田洋次監督は、主たる舞台を何処にしようかと、製作の小林俊一さんたちと打ち合わせ、ロケハンを重ねたそうです。浅草のように下町情緒の残る、古くからのお寺の参道にあるだんご屋という設定だったので、川崎大師や西新井大師、そして雑司が谷の鬼子母神などが候補地として挙がっていたそうです。
しかし山田監督はどうしてもしっくりいかなかったようです。寅さんの故郷の原風景には、旅先で故郷を思い浮かべるときに心の中でみつめる“川のある風景”が必要だったのです。そこで、思い出したのが、江戸川を背にした葛飾柴又帝釈天参道だったのです。山田監督は助監督時代、この地を訪ねていたのでした。山田監督の案内で帝釈天参道を眺めたスタッフは喝采を上げたそうです。
高木屋老舗
山田監督、渥美清さんの食事、休憩場所。柴又での撮影の初日には、スタッフを赤飯で振る舞い、関係者を感激させたそうです。
北山さんが山田監督の隣り昼食を頂いた際には、刺身、ステーキ、エビフライ、うな重等々緊張していることもありましたが、食べきれなかったことが度々あったと言います。
撮影で用意される草だんごは、高木屋老舗のものが多く、甘いもの好きのタコ社長こと太宰久雄さんは撮影中もカメラに映らないところで食べていたそうです。
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おいしい!私の知ってる柏餅と違う!
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和菓子大好き♡
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“磯おとめ”と“焼団子”
大和家
店のつくりは奥行きがあって、柴又での撮影中はメインスタッフ以外のスタッフの食事の店。とりわけ宣伝スタッフは、柴又ロケを取材するマスコミの基地としていました。また、機会あるたび、家族でエキストラ出演をしています。
北山さんも、ロケの昼食でよく利用していました。先日の記念館のセレモニーでも司会進行の大役を果たした後、自然に足が向いて大和家に立ち寄ったのですが、すでに店じまいした後だったそうです。「柴又の商店街は、夕方6時頃には閉まってしまう」のを改めて感じたと言います。
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大エビが丼をはみ出して、喉が鳴る!
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自然なよもぎの色と味!
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胡麻油の香りが漂ってます!
帝釈天題経寺
『男はつらいよ』の中でも、題経寺はくるまやの菩提寺で、柴又の人たちから親しまれています。第1作で、笠智衆演じる御前様はカメラに向かって「チーズ」と言うべきところを「バター」と言ってしまい娘の冬子の失笑を買うシーンは、秀逸です。
佐藤蛾次郎演じる寺男の源公。寅次郎の弟分として仕事を手伝っていましたたが、御前様に諭され題経寺で職に就きます。寅さんと源公は境内や廊下で遊ぶ姿がよく登場します。
60日ごとの庚申祭には柴又の人たちも江戸っ子気質の血が騒ぐのです。寅さんが20年ぶりに柴又に戻ってきた日も、帝釈天の境内では庚申祭の真っ只中でした。
矢切の渡し
柴又公園の中央には、「矢切の渡し」の船着き場があります。『男はつらいよ』第1作では20年ぶりに故郷に戻った寅さんが降り立った場所です。以降、映画シリーズの中では、寅さんが乗船する舟として、たびたび登場します。
『男はつらいよ』の世界に浸る
葛飾柴又寅さん記念館・山田洋次ミュージアムは、江戸川の河川敷に隣接している建物です。屋上の柴又公園からは、作品の舞台となる帝釈天や河川敷、そして矢切の渡しが一望でき、寅さんになりきった気分で、名シーンを追体験できます。記念館で寅さん映画を思い出した後に河川敷を歩くも良し、また河川敷を歩きながら寅さん気分を上げて記念館に入るのも良し。あなたならではの楽しみ方で、『男はつらいよ』の世界に浸ってください。
葛飾柴又寅さん記念館
北山:シリーズの中で好きな映画を探すとしたら『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(1976年)が一番かな。マドンナの太地喜和子さんは、表情もセリフも素敵です
北山:当時の女優さんは、皆寅さんのマドンナになることが目標だったんだよ
倉沢:そうなんですか!
北山:うん。寅さんマドンナ=時代を代表する女優さん、って証でもあったからね
「寅さんのマドンナになるのが夢です!」って話してる女優さんがたくさんいたんだよ
倉沢:私も、なりたかったな~
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「はい!くるまやです!」
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街中から愛される寅さん♡
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ポスターの一枚一枚にも時代を感じることができますね
倉沢:照明の方って、上からこんな風にあてられていたんですね。今はセットで、最初から、天井につらされていますよね。
北山:そうだよね。(居間のセットを見ながら)実はね、これまで居間にあがれるのは、寅さんの家族だけで、僕は一度も上がらせてもらえなかったの。でも、50作目では夢かなって、居間にあがることができたんだよ!嬉しかったな~!
TORAsan cafe(トラサン カフェ)
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雰囲気が素敵!インスタ映え!
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クリームソーダ―、大好き!
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隠れ寅さん発見っ!
山田洋次ミュージアム
デビュー作が山田洋次監督の『ダウンタウン・ヒーローズ』(1988年)だった北山さん。
マスコミ試写が行われるたび、映画の中そのままの学生姿で試写前の解説を引き受けていた。
倉沢:これはなんですか?
北山:そうか、見たことないかもね。これは、フィルムカメラといってこれで映画を撮影するんだよ。(手元にある缶を指さしながら)これは、フィルム缶。結構重いんだよ。
倉沢:今はデジタル全盛ですよね。デジタルカメラで撮影しないのですか?
北山:山田監督は、フィルム撮影にこだわる数少ない監督の一人なんだよ。真っ白から真っ黒までの細かい差が綺麗に描写できるのがフィルムカメラのメリットなんだ。
倉沢:プロの技!ですね。
北山:そうだね。でも、写される役者の方は大変だよ。デジタルのように上書きできないから。あだやおろそかにNGを出せない!
山田監督の映画作品の全予告篇視聴コーナーで、昔の映画館気分で味わって頂くことができます。「映画82作品」(267分12秒)、「山田洋次の軌跡」(14分)で、お好きな一作品だけでもご覧になれます。
寅さんゆかりのスポットを歩いたお二人…
体験していただいたお二人に、今日一日を通しての感想をお聞きしました。寅さんがふらりと通り過ぎていたかも…?
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開館時間 午前9時~午後5時(なるべく閉館30分前までにお入りください)
休館日 第3火曜日(祝日の場合翌平日) 及び12月第3火・水・木曜 ※年末年始も営業致します
入館料(両館共通)
一般 500円、小中学生 300円(他に団体、シニア割引あり)所在地 〒125-0052 葛飾区柴又6丁目22番19号 葛飾柴又寅さん記念館(葛飾区観光文化センター内)
電話番号 03-3657-3455
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北山雅康(きたやままさやす)
生年月日1967年4月15日。京都府出身。
1988年に映画「ダウンタウンヒーローズ」でデビュー。その後、映画「男はつらいよ 第40~49作」「釣りバカ日誌5~20作」「ALWAYS 続3丁目の夕日」「シン・ゴジラ」、TBSドラマ「警視庁鑑識課」、テレビ東京ドラマ「牙狼
Twitter→@mar_danco
所属:有限会社is
倉沢しえり(くらさわしえり)
生年月日1999年12月24日。東京都出身。
劇団ミスマガジン / スカッとジャパン / 週刊プレイボーイ . BOMB . ヤングマガジン / 舞台「楽園の女王」
Twitter→@kurasawa_shieri
所属:松竹芸能