Princess Letter(s)! フロムアイドル

たよりの『大好き!』は、
ずっと変わらないから

たより、実は新連載の記事が始まったんだよう!
その名も『タイヤキアイドル☆たよりんのタイヤキ放浪記』!

でもねでもね、新人タイヤキアイドルのたよりんには、
ここに辿り着くまでに、なが〜い苦労の道のりがあったんだよう(しみじみ)

ハジマリはたよりのところに来たお仕事のお願いだったんだあ。

『この度は、タイヤキが大好きだと噂のアイドル金魚鉢たよりさんに、
タイヤキについて取材させていただきたいとご連絡を差し上げました。

つきましては、たよりさんが世界で一番おいしいと思うタイヤキの名店を、
ひとつだけ選んでお話していただけないでしょうか』

たよりにタイヤキの事聞きたいって、
それってつまり、タイヤキがダイスキってたよりの気持ちが、
届いたからだよねえ?!

「たよりちゃんはもうタイヤキのプロだねー♪」
「たよりさんの『大好き』を表現できる、とっても素敵なお仕事ですね」

そんなふうに、よしのんとあやめんもすっごく喜んでくれて、
たよりもすっごくやる気満々!

おすすめのタイヤキなんて1秒につき100個は出てくるよう☆
と思ったんだけど……。

『世界で一番おいしいと思うタイヤキの名店を『ひとつだけ』選んで──』

あれ? 100個じゃなくて──ひとつだけ?!

世界で一番おいしいタイヤキのお店を、たったひとつだけ選ぶの?!

それに気づいた時には、たよりの目の前のノートにはもう、
最高のタイヤキ屋さんをたっぷり書き記したリストができちゃってたんだよう、、、;;

世界で一番おいしいタイヤキ。
たよりにとっても、インタビューを読んだ人も『大好き!』になれる最高のタイヤキ。

「やっぱりひとつなんて選べない〜>< このままじゃ取材なんて受けられないよう、、、」

* * *

「ねえねえ二人とも、どうしたらいいと思う〜?!」

こういう時はついつい、よしのんとあやめんに相談しちゃう。
ふたりはたよりのありのままを受け入れてくれるし、
とっても大事で頼れる仲間で友達なんだあ。

たよりの作ったタイヤキ屋さんのリストを見ながら、
ふたりはまるで自分のことみたいに『う〜ん』って首をひねって考えてくれた。

「ひとまず、なんとかこの中から10個選んでみるっていうのはどうかなー?」
「すこしずつ絞っていくことが大切だと思います」
「100個を10個にだね>< よ〜し、プランA! やってみるよう☆」

とはいえいきなり10個のお店に絞るのもタイヘンだから、
たよりはひとまず、たくさんあるタイヤキ屋さんをいろんな『ジャンル』に分けてみた!

例えば、たよりがと~っても楽しい時に食べたくなるタイヤキとか、
たよりが新しい服を買った時に一緒に食べたくなるタイヤキとか、
疲れちゃった時とか、泣いちゃった時とか、転んじゃった時とか、
ステージがうまく行った時とか……。

「そうしたらどうにか、大体10種類の『ジャンル』には分けることができたんだ~」
「よかったねー♪ その中にお店は何個あるの?」
「う~んと、200店くらい☆」
「むしろ増えてる!?」
「タイヤキ屋さんにこんなに様々な使い分けがあったなんて知りませんでした……」
「他にも、夜眠れない時に食べたくなっちゃうタイヤキとか、ゲームで高得点が出た時に食べるタイヤキとか色々あるんだよう><」
「それじゃあ、10個に絞るのも難しそうだねー(汗)」

~ プランA・無念の凍結……! ~

* * *

「それでは、くじ引きはいかがですか?」

今度はあやめんが思いついて提案してくれた。

「確かに! ひとつ選ぶのを運に任せれば、悩まなくて済むかもー♪」

よしのんも目を輝かせてくれた。

「たよりんのためにありがとう;; くじ引きやってみるよう! よ~し、プランB!」

* * *

「それでは、たよりさん──くじを引いてください」

あやめんがくじの入った箱を何度か振って差し出してくれた。
三人で作ったくじ引きの箱はと〜ってもかわいくて、
鯛とか、お花とか、猫ちゃんのシールで飾りつけしたんだよう☆

「たよりちゃん、しっかり!」
「たよりさん……!」

ふたりが真剣な表情で見守ってくれてる。
たよりも頑張らないと、、、!

「ようし! プランB、タイヤキくじ! いざ〜☆」

思い切って一枚引くと、
そこには抹茶クリーム専門のタイヤキ屋さんの名前が書いてあった。

「ここのタイヤキすき~☆ でも……カスタードのタイヤキはないんだよね〜……」

すこしだけ寂しい気持ちになってたら、よしのんが言ってくれた。

「それじゃあ──一回だけやり直しちゃおっか?」
「せっかくですし、メニューにカスタードタイヤキのあるお店がいいですものね」

あやめんもそう言って頷いてくれた。

「よしのん、あやめん……ありがとう;; もう一回だけ引いちゃうね><」

たよりは『今度こそ』って気持ちで、くじを念入りにかき回して、
指先にピンときたくじを引っ張り出したんだ。

「たよりちゃん、今度はどう?」
「すっごくいいお店だよう! でも、常和歌学園からはす〜っごく遠いんだよね〜」
「どちらにあるんですか……?」
「海外だよう」
「海外!? そ、それは、取材で紹介しにくいかも……」
「あともう一度だけ、やり直しますか?」

結局、その後たよりは20回くらい引いちゃって、
プランBも取りやめに……。
うう、これじゃあたより、タイヤキアイドルとして失格だよう;;

たよりは確かにタイヤキが大好きだけど。
たくさんの『大好き!』の中から『一番大好き!』を決めるのって、
こんなにも大変だったんだ……。

たよりにとっての『大好き!』って、本当はなんなんだろう。
なんだか分からなくなってきちゃった、なあ。

「こうなったら、リストのうちの目ぼしいタイヤキ、ぜ〜んぶ食べに行ってくる!」

たよりはひとりで『プランC』に出かけようとしたら、

「たよりちゃん! よかったら、あたしたちも一緒に行っても良い?」
「明日はお休みですし、三人でタイヤキ巡りをするのはいかがでしょう」
「よしのん、あやめん……! もちろんだよう! うれしい><」

そう言って、たよりと一緒にタイヤキ屋さんを回ってくれることになったんだよう☆

* * *

タイヤキってね、いろ〜んな種類があるんだよう?
いろ~んな種類があってね、ひとつひとつに『大好き!』が詰まってて。
もちろんカスタードのタイヤキが『一番大好き!』なんだけど。
じゃあ、どこのお店のカスタードタイヤキが『一番?』って聞かれちゃうと、ううう、、、
やっぱりどうしたって困っちゃう;;

『大好き!』って、いっぱいあったらだめなのかなあ。
たよりはタイヤキが大好きだけど。
こうしてたよりのわがままに付き合ってくれてるふたり。
よしのんとあやめん。の。
こともやっぱり『大好き!』だし。
どっちが好き? なんて決められないし。
お歌さんを歌うことも好きだし。踊るのも好きだし。寄り道するのも好きだし。
みんなからお手紙をもらうことだって好きだし。
応援してくれるファンのみんなのことも『大好き!』だし。
そんなふうにたよりは『大好き!』をたくさんもってて。
それで。それだけで。

今、すっごく──シアワセなんだよう。

だから──

「だから『一番』のお店は選べなかったんだよう、ごめんなさい!」

ぺこん。
頭を下げたたよりの前で、
タイヤキ記事の取材に来た編集の人は、
たよりのオハナシを真剣に聞いたあと、言ってくれたんだ。

「金魚鉢さん、それでいきましょう!」

* * *

こうして記事は一回っきりじゃなくて、
たよりが毎回、みんな違ってみんな『大好き!』なタイヤキ屋さんを紹介する形式の、
連載記事になることが決まったんだあ☆

「たよりちゃんのたくさんの『大好きな気持ち』が伝わったんだねー♪」
「今のたよりさん、とってもきらきらと輝いてみえます」

「ありがとう☆ よしのん、あやめん!」

でもね。でもね?
たよりがこうやって『大好き!』を思う存分に振りまいていられるのは。
そんなありのままのたよりを受け止めてくれる、よしのんにあやめん。
それに応援してくれる『みんな』のおかげなんだよう。

みんなのおかげでたよりは『大好き!』を『大好き!』って言えて、
とってもシアワセになれてるから。

今度はその分──『大好き!』ってみんなに伝えて、
『大好き!』を詰め込んだお歌さんを歌って、
『大好き!』って胸を張れるアイドル活動をして、

──みんなのことをシアワセにできたらウレシイなあ。

タイヤキアイドルの道はまだまだ果てしないけれど。
もし。もしもね?
そんなたよりのことを応援してくれる人がいたら。

きっと今も。この先も。
たよりの気持ちはまっすぐで変わらないから。
たよりの『大好き!』はずっと同じだから。

ずっと一緒にシアワセになろうねえ──

おーわりっ☆

金魚鉢たより ポエトリーノベル#2
『タイヤキアイドル☆たよりん参上!』
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