あ、でも「豆」じゃなくて、たよりんが好きなのは中がカスタードクリームのやつね!
ここ重要!!!!
だからねー、いわゆるカスタード知識みたいな?
うーん、語呂が悪いよう……。
あれ? そういえばカスタードって日本語で何て言うんだっけ……? 謎みが深い……。
あっ、勘違いしないでね!
中があんこのやつもふつうに好きだよう☆
だ、なーんて。
お前の会話は飛び飛びになりすぎるって怒られてきた人生でした……;;
寄り道が多いってよく言われるけど、自分ではその場その場で全力なつもりなんだよう?
そのへんは分かってくれると嬉しいなあ。
全力で生きてるし、全力で休むし、
全力で好きなものもあるし。
だからね、将来はねえ。
タイヤキを食べて。寝て。
起きて。タイヤキ食べて。寝る。っていう。
そんな生活を営もうと思ってます☆
……なんて言ってたらまた怒られて。
全力を信じてもらうのって、
なかなか難しいものだねえ。(しみじみ)
まーまー。
信じてくれなくても良いんだけど。別に。
自分だって最初は信じられなかったから。
『アイドルになりませんか?』
だなんて。
道端でタイヤキ食べてたら言われて。
『アイドルになりませんか?』
だなんて。
ガードレールに座ってたら言われて。
信じられると思う? ふつう。
そりゃそりゃ怪しいなって思うよ!
キケンキケン!!!
変な人にホイホイついてったらダメって口酸っぱく言われてるもん!!!
でもさ。
『タイヤキ毎日あげますよ』
だなんて。
言われたら。
そりゃついてっちゃうよねえ><
そんな感じでホイホイついていった場所がアイドルさんの事務所で。
今まで生きてきた中で見たことないような人たちが。
今まで生きてきた中で見たことないようなくらいに。
ドタ、バタ。ドタ、バタ。
してる所で。
なんでこんなにドタバタしてるんだろうって不思議に思ったから。
「なんでこんなにドタバタしてるの?」ってそのまま聞いちゃって。
そしたら案の定、目の前でキーボードをがたがた叩いてた背広姿の人に睨まれちゃって……。
けどねけどね。
その睨んできた人に、たよりと一緒に頭をぺこぺこ下げてくれたのがその時のマネージャーさんで。
道端でタイヤキを食べてたら『アイドルになりませんか?』って信じられないことを。
信じられないくらいのきらきらした瞳で言ってくれたマネージャーさんで。
タイヤキ食べて幸せになってるたよりを見て。
自分も幸せになれたんだって。
信じられないことを嬉しそうに言ってくれる人だったから。
この人のためにも。
あと、毎日のタイヤキのためにも。
(うーんとね、1:9くらい……?)
ちょっとの間、頑張ってみようって決めたんだ。
そしたらいつの間にやら。
たよりも毎日に追われるようになって。
ドタ、バタ。ドタ、バタ。めまぐるしくて。
それでもマネージャーさんは、ずっとタイヤキをくれたから。
約束通りに。毎日、毎日。
どれだけドタバタしてたって。
――たよりさんへ、って。
掠れたような字で。さん付けで。
黄色い付箋が貼られた紙袋を、デスクの上に置いてくれてて。
だから毎日のドタバタだって、そんなに苦ではなかったんだよねえ。
それでね、ある日。
いつもみたいにタイヤキもらいに事務所に行ったら。
机の上にいろんなアイドルさん宛の、たくさんのお手紙が届いてて。
それを宛先毎に振り分けてくのもたよりのマネージャーさんのお仕事で。
『したっぱですから』なーんて笑いながら、ひとつひとつ宛先ごとに積み重ねてく様子がなんだか好きで。
たよりも時々手伝うようになったんだあ。
積み重なるお手紙の量にはもちろん差があって。
そこにたよりへのお手紙はまだなくって。
当たり前だけど。当たり前だけど。
いつか。いつか。
自分宛のお手紙を、自分で振り分けて。
ドタバタしてる机の上に積み重ねて。
最後にマネージャーさんが笑いながら。
――たよりさんの分。だなんて。
渡してくれたらいいのになあ。
なんてことも。
思ってみたりなんかして。
* * *
ドタ、バタ。ドタ、バタ。
時間は巡って。
たまたま。なんだけど。
たよりたちが振り分けたお手紙が。
封も切らずにそのまま――
捨てられてるのを、見つけちゃって。
その時自分がどんな顔をしてたかは分からないけど。
マネージャーさんが心配そうに、事務所の外に連れてってくれて。
担当の人によっては本人に渡さないこともあるんだって。
優しい口調で教えてくれたけど。
あー、そっか。手紙って。
書いたら届くものだと思ってたけど。
そうじゃないこともあるんだなあ。
でも。ねえ。なんだか。
それって。
ねえ。
なんだかさ。
その時。
自分がどんな顔をしてたかは分からないけど。
それ以来――
お手紙の仕分けを手伝うことは、なくなっちゃった。
* * *
ドタ、バタ。ドタ、バタ。
時間は巡って。
事務所に行ったら、その日。
いつもの場所にタイヤキ入りの袋が置いてなくって。
――たよりさんへ、って。
掠れたような字で。未だにさん付けで。
黄色い付箋が貼られた紙袋が見当たらなくて。
ドタ、バタ。ドタ、バタ。めまぐるしくても。
マネージャーさんは。
ずっとタイヤキをくれてたんだけど。
約束通りに毎日、毎日。
だけどその日は――どこにもなかった。
チク、タク。チク、タク。
デスクに座って、椅子を回して。
時間は、巡って。
そしたらなんか事務所の偉い? 人がやってきて。
なんかね。
マネージャーさん、いなくなっちゃったんだって。
特に理由も言われなかったから。
たよりも理由を尋ねることもしなくって。
だって。ねえ。なんだか。
それって。
なんだかさ――。
その時。
自分がどんな顔をしてたかは分からないけど。
その日から。
事務所に届くたくさんのお手紙たちは。
振り分ける人がいなくなって。
マネージャーさんの机にどんどん積み重なって。
宛先まで届くことのない、迷子のお手紙たちが。
どんどん。どんどん。
積み重なって。
今だったら。あの中に。
たより宛のお手紙もあるのかなあ。
わかんないけど。
あーそっか。手紙って。
書いたら届くものだと思ってたけど。
そうじゃないこともあるんだなあ。
でも。ねえ。なんだか。
それって。
ねえ。
なんだかさ。
なんだかなんだかなんだかなんだか――。
その時、自分がどんな顔をしてたかは。
やっぱりどうしたって自分には分からないけど。
それからちょっとしたら、
事務所自体が潰れちゃって。
始まった時と同じくらいにあっけなく。
たよりはアイドルじゃなくなったのでした。
まーそうだよね。元から信じられない話だったし。
それにタイヤキがこれから食べれなくなるわけじゃないし。(ここ重要!)
〝ドタバタだった幸せ〟が。
〝ただただ平穏な幸せ〟になっただけの。
たったそれだけの、オハナシで――。
* * *
チク、タク。チク、タク。
時間は巡って。
その潰れた事務所のなんか、偉い?
人から封筒が届いて。
中にはたより宛の。
たより宛のお手紙が一通、入ってて。
その表には掠れたような字で。
――たよりさんへ。だなんて。
未だにさん付けで、書かれてて。
それはタイヤキを食べて幸せなたよりのことを。
アイドルに誘ってくれたあなたからの。
たよりは好きなことしてただけなのに。
自分が幸せになるためなのに。
――それを見てると、こっちも幸せになるからって。
信じられないことを言ってくれたあなたからの。
〝アイドル〟のたより宛の。
あーでも、アイドルをちゃんとやれてたかどうかなんて、もう分からないけど。
それでも全力で。
タイヤキのために。あなたのために。
9:1くらいで頑張ってた自分宛の。
はじめての、ファンレターだった。
だけど絶対に――
中身を開けてなんかやるもんか。
だって……たよりは、怒ってたから。
いきなり何も言わずに消えちゃってさ。
たよりを誘ったのはあなたなんだよ?
タイヤキだって、毎日くれるって言ったじゃんか。
もう。
一体何日分溜まってると思ってるのさ。
だから……たよりは、怒ってたから。
怒ってたから!
それ以上に。
……悲しかったから。寂しかったから。
だから絶対に!
中身を開けてなんか、やるもんか。
でもね。いつか。
道端のガードレールで。
タイヤキを食べてたら。
また声を掛けてもらえるんじゃないかなって。
――思ってても、いい?
それくらいは許してくれる?
声を掛けてもらえたら!
そしたらその時は、カスタードがついた指先で。
手紙を開けて。
こんな時もあったねえって。
笑いながら中身を読んで。
お詫びに手に抱えきれないくらいの。
いっぱいいっぱいのタイヤキを買ってもらって。
ガードレールに座って。一緒に食べて。
今度はふたりで。
――道行く人に、幸せを見せびらかせよーね。
あれ、カスタードって。
日本語でなんて言うんだっけ?
分からないけれど。
手に抱えきれないくらいのお手紙をもらえるように。
タイヤキを毎日食べられるように。
1:9くらいで頑張るから!
いつかのその日まで、全力で。
ドタバタしながら。
いつかのその日を、全力で。
楽しみに生きることにするね――
おーわり!
* * *
#プリレタ のすべてが分かる!
これまでのコンテンツやストーリーを一挙にまとめています。