映画パンフレット・キャラクターグッズの担当者にこだわりを聞くインタビュー企画。
第9回は『トムとジェリー 歌舞伎』のキャラクターグッズ担当者・酒見奈那子氏に話を聞きました。

Q. トムとジェリーと歌舞伎がコラボすることになった経緯を教えてください。

　元々ワーナー様とは、我々の部署では映画グッズで古くからお付き合いがあり、商品を作らせて頂いておりました。その中でお互いの会社の良さを引き出しあえるような企画をやりたい、という考えから、トムとジェリーと歌舞伎をコラボさせたいね、という話は前々からあったみたいなんです。
　具体的に動き始めたきっかけは、トムとジェリーのキャラクター誕生80周年を記念してアメリカのスタジオから原画を日本に初めて持ってきて、展覧会が開催される流れになったことです。催事の場所が銀座ということもあり、「日本ならでは」の商品をワーナー様も求められていくタイミングで、この企画が最適だろうということで商品化が決まりました。

Q. 海外のキャラクターであるトムとジェリーと歌舞伎の親和性はありましたか。

　日本のキャラクターは、特定の顔やポーズがあることが多く、これまでの歌舞伎コラボでは、演目が決まっていてそれに合わせてキャラクターのデザインを起こすパターンが多かったんです。でも今回のトムとジェリーは、カートゥーン・アニメのキャラクターなので、表情の豊かさや、動きに躍動感があるというところがポイントでした。このキャラクターの特性を生かすのであれば、特定の一つの演目ではなく、色んなパターンのデザインを作った方が楽しいんじゃないかという話になり、トムとジェリーでそれぞれ３種類ずつデザインを作りました。
　今までは、ポーズをとったり、見得をしている歌舞伎グッズはあまりなかったと思うので、トムとジェリーの動きを組み合わせることで、生の舞台である歌舞伎の、俳優さんの動きがつくことで感じられる、迫力とか躍動感をデザインに引き出せたのかなと思います。

Q. キャラクターデザインでこだわったポイントを教えてください。

　トムとジェリーはキャラクターのスタイルガイドがあるのですが、その中から歌舞伎らしいポーズを選んで、それに扮装をつけて、部分的には描き起こしたり直したりしてデザインを作っていきました。例えば松王丸だったら“にらみ”を利かせているポーズがらしいんじゃないかな、とスタイルガイドからチョイスして、手の形等決まりがある部分は書き起こして作りました。
　演目も悩んだのですが、場面や描写がわかりやすいものや、ジェリーに合わせてネズミが出る演目を選んだりもしました。スタイルガイドの素材がたくさんあるので、割と自由に良い感じで仕上げられたと思います。袖や髪の長さ等細かいところまでこだわっているので、歌舞伎ファンの方には演目で見る楽しみもあるかもしれません。苦労したというよりは合うポーズを選ぶ楽しさがありました。

Q. 制作全体で他にこだわったポイントはありますか？

TOM AND JERRY and all related characters and elements © & ™ Turner Entertainment Co. (s19)
©SHOCHIKU Co., Ltd.

　催事にいらっしゃるのは女性の方が多く、生活雑貨系のグッズがよく売れるので、持っていてお洒落なデザインや、絵が単純にボンとおいてあるのではなく、総柄っぽくしてみたり、ポップな雰囲気が出るような柄を組んでみたりと、工夫して制作しました。特に巾着やマスキングテープ等は柄っぽくするために、何パターンも作ってその中から選びました。
　ロゴや背景等、キャラクター以外の素材はゼロから作ったのですが、花や霞など色々な種類の和柄をチョイスして、且つキャラクターを引き立てるような背景を作るのが難しかったです。
　トムとジェリーのスタイルガイドは、雑貨として使いやすいようなテキスタイルデザインのようなものが多く開発されており、海外で開発されたそのスタイルガイドのイメージに触発された形でそういったテイストにも挑戦しました。

Q. おすすめのグッズはありますか？

TOM AND JERRY and all related characters and elements © & ™ Turner Entertainment Co. (s19)
©SHOCHIKU Co., Ltd.

　定番のお土産としておすすめなのはトムとジェリー仕様の歌舞伎揚げです。
　個人的にお気に入りなのはトートバッグで、色味が可愛くてトムとジェリーのかわいらしさと着物の雰囲気みたいなものが出ているデザインになっているのですが、少し大きめのサイズで、歌舞伎の筋書きがすっぽり入ります。私も歌舞伎をよく観るのですが、筋書きや羽織ものを入れられるようにこのトートバッグを折りたたんで鞄に忍ばせて持っていくと、荷物が増えたときに便利なので、歌舞伎や演劇のご鑑賞のおともに使っていただけたら嬉しいなと思います。
　観劇にくるお客さんが使いやすいものがいいなと思い、買ってもらえる人のことを想像してアイテムを色々選定して作ったので、是非お手に取っていただきたいです！