エンタテインメントの世界

Vol.7 『天才作家の妻 -40年目の真実-』映画パンフレット

映画パンフレット・グッズの担当者にこだわりを聞くインタビュー企画。
第7回は『天才作家の妻 -40年目の真実-』(2019年1月26日公開)の映画パンフレット担当者・益子雄輝氏に話を聞きました。

Q.洋画の場合も、試写やプレスシート(宣伝用にマスコミに配る冊子資料)、書籍などを参考に構成案を作り、プロデューサーなどと相談の後、台割に落とし込んでいくとのことですが、デザイナーや執筆者の候補はどうやって考えていますか?

 異動して最初の一年間に、二人組で教えていただきながら11作品(邦画8作品、洋画3作品)を担当させていただきましたので、デザイナーや執筆者に関しても、いろいろと教えていただきました。
 一人で作品を担当するようになり、『旅猫リポート』『かぞくいろ』『天才作家の妻』と自社の関わる度合いが高い作品が続いてますが、デザイナーについては、宣材を手掛けているデザイナーや作品のジャンルとデザイナーの特性を見て候補者を立てています。執筆者は、作品のオフィシャルライターや記事・企画内容について詳しい方を探してきて執筆を依頼しています。

Q. 制作の際に大切にしていることを教えてください。

 私に関して言えば、主観を極力入れないようにしています。作品は監督(制作者、製作者)のものなので、作品に近いところにいる人とのコミュニケーションを大切にしています。
 そういう意味では、まずプロデューサー陣とは、密にコミュニケーションを取りたいと思ってます。(他社からパンフレットの制作のみを委託されているものだと中々難しいところもありますが。)
 邦画だと、監督やスタッフ、キャストの取材をしていく中で、ますます作品についての情報や制作者の皆さんの熱がビンビンと伝わってきますので、私も購入者の方々に喜んでいただけるパンフレットに仕上げようという気持ちがグングンと高まっていきます。
 本作に関して言えば、作品プロデューサーの大森さんと宣伝プロデューサーの真保さんにはとてもお世話になりました。また、月一の関係者で開く全体会議に出させていただいて、公開に向けての興行、営業、宣伝、各ブランチ、グループ会社の取り組みを肌で感じられたことが、私にとってはとても良かったです。

Q. 今回こだわったポイントを教えてください。

 まず、「作家の妻」の話なので、著名な作家や芸術家、文化人の妻で、話しを伺える方がいないか探しました。何名か考えていくうちに、作家夫妻の両方に書いてもらおうという考えに至り、5組の作家夫妻と、企画が成立しなかった時のために、4名の作家の妻を候補者として立てました。
 夫妻のうち、一方がNGだった場合は成立しない企画でしたので、佐藤友哉さんと島本理生さんにコラムをご執筆いただき、見開きで掲載することが出来たことは嬉しかったです。
 ご尽力いただいたKADOKAWAの担当者の方々に感謝しております。

Q. この作品ならではの制作エピソードはありますか?

 やはりノーベル文学賞を受賞する話ですから、ノーベル文学賞については、図書館で本を借りたり、ネットでもさんざん調べました。その過程で、ノーベル文学賞は他の文学賞のように特定の作品に与えられるものではなく、その人物が「文学を通してどのような貢献をしてきたか」という功績に対して与えられるものだということを今回初めて知りました。
 また、宣伝部でも、本作のシーンに絡めたトリビアやノーベル賞全体のトリビアをSNSやプレスで展開してまして、当初はそれらに情報を追加してパンフレットに転載しようと思っていたのですが、宣伝とパンフレットでは意図する対象や意味合いが大きく異なりますので、パンフレットでは、文学賞に絞ったコラムの掲載に至りました。「女性でノーベル文学賞を受賞したのは、これまでたったの14名しかいない」ということでコラムをご執筆いただいた柏倉康夫先生とは、電話とメールでのやり取りになりましたが、とても丁寧にご対応くださり、身が引き締まる思いでした。

Q. 読者の方へメッセージをお願いします。

 多くの方々にお世話になり、パンフレットが完成しました。
 そして、パンフレットを購入してくださる方々がいることで、この仕事をさせていただけています。そう考えると感謝の気持ちしかありません。
 今はSNSで映画はもちろんですが、パンフレットの感想を書いてくださる方もいらっしゃり、そういった感想を拝見するのは、とても嬉しいです。

松竹株式会社 事業部出版商品室
益子 雄輝(ますこゆうき)

 次回・Vol.8