映画パンフレット・キャラクターグッズの担当者にこだわりを聞くインタビュー企画。
第6回は『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018年12月28日公開)のグッズ担当者・菊井優香氏に話を聞きました。
第1回インタビューにも登場した菊井氏。今回はグッズ制作のより深い部分に迫ります。
Q. グッズ製作において、作品で求められるであろうグッズのテイストとご自身の趣味が違って悩むことはありますか?
普段、オフィスを観察するだけでも、20代の方のデスクと40代の方のデスクの雰囲気が意外と違うことや、デスクに物が多いか少ないかということだけでもヒントになったりします。何気なく生活している中にもヒントがあることに、最近気づくようになりました。
Q. 今回のグッズは黄色と水色が印象的ですが、テーマカラーはどう決めていますか?
出来ていればポスタービジュアルや、公式ホームページ、原作があれば原作や、台本の表紙をヒントにすることもあります。そこからイメージを膨らませて、例えば、明確にキラキラ系女子向けの恋愛物の時は、わかりやすくピンクのポスターだったりするので、(ピンクがいいんだな)と思って落とし込んでいきます。
今回の場合は、元々のティザーポスターはシンプルで、白に少し黄色が入ったものだったのですが、本ポスターの方はきれいな朝焼けの色味だったので、最初はオレンジや赤っぽい色を入れてみようかとも思いました。ですが、やはりタイトルにも入っているバナナの黄色をメインで推していく、ということになり、本ポスターもそうですが、企画プロデューサー(以降、プロデューサー)から空のイメージがありますよ、という話を伺って、黄色の次は空をイメージした、水色に近いような優しい青をテーマカラーにしました。
Q. 今回のグッズ製作で苦労した点はありますか?
作品のイメージを形にしていく作業になるので、方向性を定めるまでにすごく時間がかかりました。一番デザインがシンプルだったクリアファイルから始めたのですが、最初8パターンくらいデザインを出し、その中から少しずつ候補を絞ってく中で、全体のグッズイメージも固まってきました。
テーマカラーもそうですが、今回はプロデューサーの意向を参考にした点が多かったです。デザインコンセプトの「普段使いできる、普通の雑貨に近い様なイメージの商品」というのも、プロデューサーの話から出てきました。「文房具店等においてあるようなものを目指したい」という想いを反映するため、ぱっと見に映画のグッズっぽくないものを目指しました。
Q. 今回こだわったポイントを教えてください。
『8年越しの花嫁』の時もそうだったのですが、作品のテーマの中に「病気」があると、それだけで「暗い」とか「悲しい」というマイナスのイメージになることが多いので、そうならないよう、手に取った際に、宣伝コピーにもある「笑い」や「愛しき実話」のようなプラスの気持ちになれる商品を作りたいと思いました。
邦画作品では、商品に出演者の肖像を使用することも多いのですが、今回は、作品の明るい側面をより伝えるため、イメージ商品にすることとなりました。「お客様が一見した時にどう思われるか」、「映画を見終わった時に買いたいと思っていただけるか」が一番大事なので、お客様が手に取りやすく、優しい、あったかい前向きな気持ちになれるようなものを、と思って製作しました。
パンフレットと違い、グッズでは、作品の内容を全て脳内で補完することは難しいですが、その手助けになる、映画の感動を持ち帰るための材料、いい思い出の一つとして残してもらえるものを作りたいといつも思っています。
Q. おすすめのグッズはありますか?
バナナの形もデフォルメした丸っこいものや、バナナに顔を付けてキャラクターを作ってしまうなどの案もあったのですが、想定される観客の年代層も考慮して、シンプルで使いやすい、触感でやわらかさと優しい印象を出したものを制作しました。
映画をご覧になる際に、ぜひお手に取ってみてください。
菊井 優香(きくい ゆうか)
次回・Vol.7