エンタテインメントの世界

Vol.13 『引っ越し大名!』映画パンフレット

映画パンフレット・グッズの担当者にこだわりを聞くインタビュー企画。
第13回は『引っ越し大名!』(2019年8月30日公開)の映画パンフレット担当者、岩田康平氏に話を聞きました。

※一部、設定やストーリーに触れている箇所がありますので、ご注意ください。

Q. 時代劇作品ならではの企画や記事はありますか?

 コメディ映画として、誰が観ても楽しくかわいらしい作品ですが、史実を背景とした、しっかりした時代劇だとも思っています。なので、作品の補足として当時の時代背景などがわかるようにしたいなと思い、「引っ越し指南書」というページを作りました。登場人物が講義形式で、当時の引っ越し事情や本作に出てくる御渡方覚書十ヶ条(おわたしかたおぼえがきじゅっかじょう)を解説するページになっています。

 例えば、及川光博さんが演じた引っ越し大名・松平直矩は、生涯で7度の引っ越しをしています。本作ではそのうち2度しか描かれていませんが、他の引っ越しはどうだったのか、直矩以外の大名は引っ越しにどう苦労していたのか。そうした、知っていたら、本作がもっと面白くなるようなことを、実際に本編で国替え時代考証を担当された日比佳代子さんに解説していただき、星野源さん演じる春之介と高畑充希さん演じる於蘭が、引っ越しの手順を奥義するようなページにしました。

 また、一部界隈で人気のある御手杵(おてぎね)の槍についても、高橋一生さん演じる鷹村源右衛門に講義してもらいました。僕個人も子供の頃から歴史の授業が苦手だったので…、色気のある鷹村に解説してもらっていたら、もっと授業が楽しかったのかなという個人的な願望もあって作りました(笑)

Q. デザインのこだわりを教えてください。

 作品としてはポップだけれど、描いているものは人と人とのしっかりした人間ドラマなので、“ザ・時代劇”という雰囲気のパンフレットにしました。ただ、それだけでは内容が堅くなってしまうので、中身は横文字や英語を使ったり、全体的に人物の切り抜きをちりばめ、登場人物が色んなところにいる、かわいらしいレイアウトにしたりしています。表紙は、その和洋のバランスをどうとるか、デザイナーと一緒に苦悩したことを表現しました(笑)

Q. パンフレット制作の際にこだわっているポイントを教えてください。

 こだわりという言葉が正しいかわかりませんが、毎回そのコンテンツの熱狂的なファンと一緒に仕事することにやりがいを感じています。今回も、日比さんの国替えに対する知識や、御手杵専門家の熱量など、聞いているだけで面白く、自分としては、その専門家のこだわりや熱量をどうパンフレットにまとめたら一番伝わるのかを考えています。

 また、パンフレットは作品作りの一番最後の作業を担わせてもらっているため、できる限り、本作に関わった作り手の熱量を集め、この作品を作ってよかったなと思ってもらえるようなパンフレットを作れたらと思っています。そうした中で、本作に参加された主要な登場人物のコメントをできる限りいただいております。

Q. 今後チャレンジしたいことはありますか?

 この仕事で一番のやりがいを感じることは、作品が盛り上がることもですが、パンフレット制作に協力していただいた人達が評価されることです。別の作品になりますが、パンフレットのデザイン面で、有名漫画家さんにtwitterでリツイートされてバズった時は本当に嬉しかった。なので、今後もできる限り、熱量のある人を探し、協力し、一緒にパンフレットを作っていきたいです。よくSNSで「担当作品 パンフ」と調べると、「こんな記事を載せて欲しい」ということが書いてあったりします。本作の「御手杵」ページはそれを参考にしました(笑)。なので、カンニングしてでも、できる限りお客さんの要望をかなえるようなものを制作していきたいです。

Q. 読者の方へメッセージをお願いします。

 キャスト・スタッフインタビューをして印象的だったのが、星野さん、高橋さん、高畑さんをはじめ、皆さん本作で何か新しい挑戦をしていることです。何もできなかった引きこもり侍が成長したように、時代劇というなかなか制約も多くある中で、皆さん新しい何かを発見しています。そうした本編を超えたキャストの成長をパンフレットには載せていますので、『引っ越し大名!』の裏側を知りたい人は是非パンフレットを読んでいただきたいです。
松竹株式会社 事業部出版商品室
岩田 康平(いわたこうへい)

取材:松竹株式会社 経営企画部広報室

 次回・Vol.14