エンタテインメントの世界

Vol.12 東京タワーお化け屋敷『老婆の呪面』

担当者にこだわりを聞くインタビュー企画。
第12回は東京タワーお化け屋敷『老婆の呪面』のプロデューサー・富田剛史氏に話を聞きました。

※一部、設定・ストーリーに触れている箇所がありますので、ご注意ください。

Q. 松竹お化け屋本舗について教えてください。

 松竹お化け屋本舗とは、創業124年の松竹が長年のエンターテインメント事業で培ったノウハウを注ぎ込み、まるで「ホラーの世界に紛れ込んでしまった」かのような臨場感あふれるホラー体験を提供するお化け屋敷事業です。
 1998年より展開するホラーブランドで、元々は大船にあった撮影所内の遊園地(鎌倉シネマワールド)の一コンテンツとして産声を上げました。それは、『怨霊屋敷』というニュース仕立てのお化け屋敷で「閉鎖されたいわくつきの撮影スタジオを公開。呪われた所なので気を付けてください」という設定でスタジオを開放し、お客様に入ってもらうというものでした。それを始まりとして、「お化け屋敷事業をやっていこう」と現在に至ります。

Q. VRとお化け屋敷がコラボすることになった経緯を教えてください。

 2018年の5月、“エンタテインメント×テクノロジー”をテーマに松竹㈱・カディンチェ㈱・㈱侍という3社共同でミエクル株式会社を設立したことがきっかけです。設立後、VRをはじめとする様々なコンテンツの開発を進めているのですが、その中で、私がミエクル設立以前より関わっていたお化け屋敷事業と組み合わせたら面白いかもと考え、本企画となりました。

Q. VRによってできるようになったことや、広がったことはありますか?

 松竹お化け屋本舗ではウォークスルー型お化け屋敷によるライブ感を大切にしてきました。VRコンテンツの導入により、「ライブ感を更に楽しむための味付け、強いエッセンス」にもなるのではと考えており、ヴァーチャルとリアルの相乗効果を期待します。
 更に広がったことと言えば、外食産業のきちりホールディングスさんとの、ホラーと食を組み合わせたコラボや、名古屋の大須演芸場とのコラボを実施します。大須演芸場では地元の落語家さんにVRの前段の話を作ってもらい、VRコンテンツ視聴に繋げる新たな試みとなります。「普段、年配のお客様が多い劇場に若者にも来てもらいたい」というご要望もあり、夏の一コンテンツとしてVRを提供したのですが、各地の劇場で展開できる可能性があると考えます。
 今までお化け屋敷事業の営業をしてきた際、「ある程度の広さのスペースが必要」「会場施工費がかかる」「スタッフの確保が必要」等クリアしなければならない条件が色々とあり開催を断念することもありました。VRのホラーコンテンツはその条件に囚われることなく開催が可能で、ホラーの世界への没入感も最高です。松竹お化け屋本舗の魅力をお手軽に体験できるツールとしてもっと事業の拡大に繋げていきたいと思っています。

Q. 東京タワーお化け屋敷『老婆の呪面』でこだわったポイントを教えてください。

 VR体験とリアル体験の自然な融合にこだわりました。一連の流れの中で説明っぽいオペレーションは極力なくしたいと思っています。
 対策としては誘導スタッフの演技であったり、ストーリーの仕立てかたです。
 今回のお化け屋敷自体は、“お面”をテーマにしているのですが、「人の顔の皮を剥いで作られたお面を被ると、顔の持ち主の体験が見える」という話になっています。ゴーグルをお面に見立てた設定や、お面を被ることで「顔をはぎ取られた人」の視界が再現されるストーリーが、そのギャップをなくす要素になると考えております。

Q. インバウンド(訪日外国人旅行者)を意識している点はありますか?

 東京タワーの来場者の割合を見ると、外国人観光客は半分くらいの印象があります。2015年にお化け屋敷を始めたときは、外国人のお客さんに声をかけても「ノーノ―」と、否定的な反応だったのですが、年々、楽しんでいただける方が増えてきていると感じています。「お化け屋敷は夏の暑さをしのぐ為の日本の文化」である事を海外のお客様に対し発信しているのですが、オリンピックを機に日本文化に対する理解度が高まったのか、直近では感覚的に全体客数の3割くらいになってきています。
 松竹お化け屋本舗のリアルお化け屋敷はすでに海外進出していますが、VRお化け屋敷はより手軽に輸出も可能ですので、もっともっと海外発信を強化していきたいと考えています。

Q. お客様へのメッセージをお願いします。

 怖がるより楽しんで、最後は笑って帰っていただきたいです。
 エンタテインメントとしてのホラーなので、映画と一緒でサプライズがあることが大切だと考えており、サプライズを意識して作っています。ただ後ろから大きな音がしたら人間びっくりして怖がるとは思うんですが、それだけでは邪道だと思っています。インテリジェンスじゃないですけど、何か納得感があって、全体の流れ中で緩急つけながら驚きと発見と意外性を感じていただいて、結果的に「怖かった」となっていただきたい。そうすると、エンタテインメントとしてのホラーが成立するのではないでしょうか。それがJホラーと呼ばれる沸々とした日本のホラーの怖さなのではないかと。来ていただいたお客様の中で、今後の生活の糧、いい思い出、貴重な体験となれは嬉しいです。(2018年お化け屋敷の体験レポートはこちら

松竹株式会社 事業部事業推進室
富田 剛史(とみたまさし)

取材:松竹株式会社 経営企画部広報室

 次回・Vol.13