役に命を吹き込む
衣裳 岡田敦之
どんな性格なのか、どんな時代を生きているのか、役に命を吹き込む衣裳。それを身にまとった時、俳優と役とが一つになる。今回は、松竹衣裳より岡田敦之さんをご紹介します。
Q.この仕事を志すようになったきっかけを教えてください。
Q.衣裳のお仕事内容を教えてください。
次に、生地の問屋や京都にある着物屋、日暮里の繊維街、プレスルームなどに連絡をし、レンタルをするものは借り、作るものは製作に入っていきます。映画だと、世界観を創りあげていきますが、テレビドラマはこれから流行する色や服のニーズにどう合わせていくかが重要です。日頃から雑誌を読んだり、メーカーのプレスに足を運ぶなど、常に最新の情報をキャッチしておかなければなりません。渋谷や原宿、中目黒、代官山といった街を歩き、通り過ぎる人の服や警察や消防、鑑識などの制服をついつい目で追って、「あっ、制服が変わったな」と思うこともあります。これはもう職業病ですね(笑)
岡田:シーンごとに、監督、俳優、プロデューサー、カメラマン、録音、美術、照明、メイクのスタッフが立ち会い、衣裳合わせを行います。特に録音は、作品によっては衣裳に穴を開けて、中からマイクを通さなきゃいけない、ということもあり対応が必要になるので、この段階で決めておきます。これらを一つの作品につき、約500ポーズほど積み重ね、クランクインです。
岡田:できるだけ、コスプレにならないように、原作に寄せます。ファンがついていますし、世界観を崩すのはどうかな…と思うので、崩すのであれば、全く違うものにしちゃいます。コスプレにならないように見せるためには、サイズ感や生地感など、細かいところまで作る必要があります。原作がないものは、自分の好きな作品からヒントを得て、「このキャラクターはこれと近いからこんな感じでいいですか?」と提案したりするなど、少しアレンジを加えることでミックスして、オリジナリティを出していきます。時代物だと、国会図書館にこもって、当時の印刷物や資料を探します。個人的には明治や大正は、服の色彩もカラフルで、とてもいい時代だと思います。
岡田:帽子や鞄、時計、靴など「持ち道具」と呼ばれるものは小道具が、それ以外は衣裳が担当します。衣裳合わせの時に最終確認をするのですが、それぞれが思うイメージで持ってくるので、時に方向性が異なってしまうこともあります。その場合はなるべく衣裳に寄せてもらい、作品全体のバランスが整うようにしています。最近は主演俳優個人に付いて、トータルコーディネートを行う「スタイリスト」も増えています。「スタイリスト」は、衣裳とは異なり、服から持ち道具まで全てを一人がフルコーディネートをします。連続ドラマの場合は、先ほども話したように、最新の流行を追うことが大切なのでそれでもいいのですが、映画はあくまで物語の世界観を崩さないことが大切です。主演からエキストラに至るまで、一貫性がなければいけません。キャラクター1人が目立てばいいということではなく、物語としての衣裳をデザインしていきたいと思っています。
Q.最近は映像技術の発展により、細部に至るまで映るようになりました。そういった流れの中で、衣裳の選び方は変化をしているのでしょうか。
Q.最後に、この仕事に求められる素養とは何でしょうか。
岡田敦之(おかだあつゆき)
2000年松竹衣裳入社。映画『青の炎』ではじめて衣裳担当をし、その後、映画「踊る大捜査線」シリーズ(本広克行監督)、映画『かぞくいろ』(2018年公開/吉田康弘監督)、NHK連続ドラマ「赤ひげ」シリーズも手掛けるなど、映画、ドラマ、 CM、PV、MV、舞台と多数の作品に携わっている。
<おまけ>教えて!衣裳さんお勧めの一作
『グランド・ブダベスト・ホテル』(2014年/ウェス・アンダーソン監督)
セットも含めてパンチある作品だと思います。時代物の作品ですが、今でもあの衣裳を着ていたら、とてもかっこいいと思います。
『ゲーム・オブ・スローンズ』(HBO制作テレビドラマシリーズ)
とにかく衣裳の作りこみがスゴイ!エイジングの加工技術がどうやってここまでやっているんだろう…と分からないぐらいです。「同じようにやってみたいな」とは思うのですが、きっと何十人もの応援が必要ですね。