風前の灯

公開日：1957年12月1日（日）

松竹シネマPLUSへ

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・79分
小さな家一軒のセットと、たった20日間で撮り上げたピリ辛コメディ。欲にまみれたみみっちい小市民ばかりが登場し、その言動をコミカルに、そしてテンポよく赤裸々に追っていくことで、人間の不思議な可笑しみまで見事に描出されていく。前作『喜びも悲しみも幾年月』でまで笑いのネタにする徹底ぶりで、そこで日本の麗しき模範夫婦を体現した高峰秀子と佐田啓二に真逆のダメ夫婦を演じさせているのも楽しいが、これは「役者はイメージを固定化させてはいけない」という木下監督の計らいでもあった。

STORY
幸平（田中晋二）は田舎から上京してきた。新宿駅の広場で、無一文の空っ腹をかかえ、ぼんやり立っていると、不良たちに脅された。前から彼らが目をつけていた郊外の一軒だけ離れて建っている小住宅、佐藤家に強盗にはいるのに誘いこまれた。彼らが狙っているのも知らず、佐藤家では、人々が欲の皮をつっぱらせた生活を今日もするのだ。佐藤てつ（田村秋子）はこの家の主だ。小金を貯めたこの強欲婆の懐を息子の金重（佐田啓二）、百合子（高峰秀子）夫婦は狙っている。金重は、大学は出たけれど下駄屋の店員をしている。彼は懸賞の一等、五、六万円もするカメラに当選したが、てつ婆には、黙っていた。同居人の美代子（伊藤弘子）は喫茶店のウェイトレスで、大学生の北村（里見孝二）と良い仲だ。アイロンで畳を焦がし、老婆と大喧嘩をして部屋を出ることになった。百合子の妹さくら（小林トシ子）は年下の夫とアパート暮しをしていたが、金重の当選を知り、金を目当てにやってきた。もう一人の妹あやめ（有沢正子）も現れた。百合子から、美代子の部屋が空いたと知らされ、ボーイフレンドの大学生鈴木（佐藤芳秀）を移転させるつもりだ。てつの甥の前科六犯のピストル強盗赤間（南原伸二）も訪ねてきた。彼は戦災のどさくさに父母を亡くし、てつに彼の家を横領されたのを奪い返しにきたのだ。外では不良たちが、これらの人の出入りに、ただ飽きれていた。とんだ目算違いだった。何度も忍び入りかけて失敗した。幸平はだんだんやる気がしなくなっていた。一旦、部屋を出た美代子さえまた帰ってき、鈴木と部屋の奪い合いから喧嘩を始めた…。